2022年01月30日 [からだのこと]
(257)サンデーイルネス(仮)大動脈弁疾患について
お疲れ様です。院長です。
1月30日のサンデーイルネスでございます。
1月最後のイルネス辞典となりましたね。
もうすぐ2月、ますます寒くなりますよ。
そして、ここ京都でも、年に1回か2回は大雪が降って、街の機能を麻痺させたりしますんで、これからは注意が必要ですな。
では今日のイルネス辞典は、前回とセットで読んでいただきたい、高齢者の心臓弁膜症、「大動脈弁疾患」について解説していきたいと思います。
病気の原因によって、悪くなる弁や病態(弁の閉まりが悪く血液が逆流する閉鎖不全症(へいさふぜんしょう)、弁の部分が狭くなることを主体とする狭窄症(きょうさくしょう)、それらが合併する狭窄兼閉鎖不全症(きょうさくけんへいさふぜんしょう))に特徴があります。
成人の先天性奇形では、大動脈弁二尖弁(にせんべん)(通常は大動脈弁は3枚の弁からなりますが、この形成不全では2枚のまま)、リウマチ熱では僧帽弁あるいは大動脈弁(ときに両方)の閉鎖不全症、狭窄症が高頻度にみられます。
とくに僧帽弁の狭窄症のほとんどは、現在でもリウマチ熱によるものといっていいでしょう。
一方、加齢による弁や血管内膜の動脈硬化は、おもに左心系の僧帽弁の閉鎖不全症、大動脈弁の閉鎖不全症あるいは狭窄症を起こします。
加齢に伴って、僧帽弁の付着部(弁輪)の石灰化もしばしばみられ、逆流や、まれに狭窄の原因になることがあります。
高齢者では、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの虚血性(きょけつせい)心疾患による弁下部組織(弁を引っぱることで弁の反転を防いでいる腱索(けんさく)、乳頭筋(にゅうとうきん)などの総称)の乳頭筋機能不全、乳頭筋・腱索の断裂による僧帽弁や三尖弁の閉鎖不全症、さまざまな原因による心不全に伴って右心室や左心室が拡大して三尖弁輪や僧帽弁輪が広がって起こる閉鎖不全症などの二次的なものがあります。
このほかに、弁や弁下部組織が先天的にぜい弱で起こる弁逸脱症、腱索断裂による閉鎖不全症があります。
大動脈弁疾患を起こす原因によって、弁の石灰化する部位や程度に多少の違いがあることが知られています。
日本の高齢者の場合、石灰化の原因の60%は加齢による弁の硬化・変性で、リウマチ熱によるものは20%、大動脈二尖弁によるものが十数%とされています。
いずれの場合も、弁の狭窄や閉鎖不全の原因になります。
大動脈二尖弁による狭窄症では、40〜50代で発症して、比較的急速に進行するものもあります。
弁の石灰化は、加齢によるほか(10年で約2倍)、高血圧(1.7倍)や肥満(5s増えると1.4倍)があると増加し、死亡率を4倍にするといわれています。
喫煙や糖尿病との関連は今のところ少ないとされていますが、コレステロールとの関連を示唆する報告もあります。
石灰化は、男性より女性にやや多くみられます。
幸い、軽度の閉鎖不全症はほとんど進行することはありませんが、大動脈弁の閉鎖不全や狭窄症では、かなり重症になるまで症状がないことが多く、注意を要します。
とくに、ある時点をすぎると(狭窄に伴う大動脈弁をはさんで左心室と大動脈で圧較差が40〜50oHg以上)、進行が速くなり手術を要する例もあるので、注意深く経過をみる必要があります。
典型的な症状としては、心臓のあたりがとても痛くなる狭心痛、失神、息ができない苦しさなどの心不全症状が知られていますが、これらの症状が現れた時はすでに重症で、予後不良の兆候です。
熟練した循環器専門医であれば、大動脈弁疾患の有無の診断や閉鎖不全症の進行度の判定も聴診だけでほとんど可能ですが、狭窄症の程度を正確に判定することは必ずしも簡単ではありません。
胸部X線、心電図、心エコー(超音波)が大変有効です。
手術の要否が問題となる場合は、10%以上に合併するとされる虚血性心疾患の有無を判定するために、心臓カテーテル検査が必要です。
手術の必要がなく、自覚症状がない場合では、合併症の治療が主となります。
10〜20%の人に、不整脈の一種の心房細動(しんぼうさいどう)がみられます。
心房細動では、心房内に血液がよどんで血栓ができやすく、また心拍数に対する自律神経の調節が効きにくいので、運動・興奮・発熱などですぐに頻脈になり、脳血栓(のうけっせん)や心不全(しんふぜん)を起こしやすいことが知られています。
血栓予防のための薬剤(ワルファリン)による抗凝固療法と、頻脈予防のために心拍数のコントロール(β(ベータ)遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤など)が必要です。
胃潰瘍や脳出血後間もないなど、出血の危険性が高いケースで、抗凝固療法ができない場合は、代わりに抗血小板療法と胃潰瘍予防薬の併用や、血栓予防を行わない選択をすることもあります。
重症の心不全に対しては、塩分制限、安静のほか、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、強心薬などが適宜使用されます。
しかし、狭心痛、失神、心不全などの症状がある時は、内科的治療よりも外科的治療のほうが予後がよいとされ(70歳以上でも5年生存率約80%)、ほかに重大な病気がなければ、最近では80歳前後でも外科的治療法を考慮すべきです。
待期的弁置換(ちかん)手術の危険度は、若〜壮年者より高くはなるものの、許容できる範囲になってきています。
また、高齢者では耐用性において若干不利でも、手術後の抗凝固療法を必要としない生体弁を利用したり、弁の形態に工夫をして有効弁口面積を大きくした人工弁を採用することで、術後の生活の質(QOL)の改善を図ることなどが行われています。
鼠径部(そけいぶ)(脚の付け根)の動脈から挿入した風船付きカテーテルによる大動脈弁形成術は、70%近くに再狭窄が起こること、死亡や緊急手術に至る危険性が高いことなどから、緊急の場合を除いて積極的には行われなくなっています。
近年、器具の改良が進み、カテーテルによる人工弁の留置などの新たな手技が開発されつつありますが、日本では器具の認可の問題もあり、まとまった報告はまだほとんどないようです。
僧帽弁置換(ちかん)手術は大動脈弁置換手術よりリスクが少し高くなりますが、症状が出ている場合には内科的治療に比べて、生活の質の向上とその後の体力の回復が見込めます。
いかがでしたか。
では次回のイルネス辞典をお楽しみに〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院
1月30日のサンデーイルネスでございます。
1月最後のイルネス辞典となりましたね。
もうすぐ2月、ますます寒くなりますよ。
そして、ここ京都でも、年に1回か2回は大雪が降って、街の機能を麻痺させたりしますんで、これからは注意が必要ですな。
では今日のイルネス辞典は、前回とセットで読んでいただきたい、高齢者の心臓弁膜症、「大動脈弁疾患」について解説していきたいと思います。
病気の原因によって、悪くなる弁や病態(弁の閉まりが悪く血液が逆流する閉鎖不全症(へいさふぜんしょう)、弁の部分が狭くなることを主体とする狭窄症(きょうさくしょう)、それらが合併する狭窄兼閉鎖不全症(きょうさくけんへいさふぜんしょう))に特徴があります。
成人の先天性奇形では、大動脈弁二尖弁(にせんべん)(通常は大動脈弁は3枚の弁からなりますが、この形成不全では2枚のまま)、リウマチ熱では僧帽弁あるいは大動脈弁(ときに両方)の閉鎖不全症、狭窄症が高頻度にみられます。
とくに僧帽弁の狭窄症のほとんどは、現在でもリウマチ熱によるものといっていいでしょう。
一方、加齢による弁や血管内膜の動脈硬化は、おもに左心系の僧帽弁の閉鎖不全症、大動脈弁の閉鎖不全症あるいは狭窄症を起こします。
加齢に伴って、僧帽弁の付着部(弁輪)の石灰化もしばしばみられ、逆流や、まれに狭窄の原因になることがあります。
高齢者では、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの虚血性(きょけつせい)心疾患による弁下部組織(弁を引っぱることで弁の反転を防いでいる腱索(けんさく)、乳頭筋(にゅうとうきん)などの総称)の乳頭筋機能不全、乳頭筋・腱索の断裂による僧帽弁や三尖弁の閉鎖不全症、さまざまな原因による心不全に伴って右心室や左心室が拡大して三尖弁輪や僧帽弁輪が広がって起こる閉鎖不全症などの二次的なものがあります。
このほかに、弁や弁下部組織が先天的にぜい弱で起こる弁逸脱症、腱索断裂による閉鎖不全症があります。
大動脈弁疾患を起こす原因によって、弁の石灰化する部位や程度に多少の違いがあることが知られています。
日本の高齢者の場合、石灰化の原因の60%は加齢による弁の硬化・変性で、リウマチ熱によるものは20%、大動脈二尖弁によるものが十数%とされています。
いずれの場合も、弁の狭窄や閉鎖不全の原因になります。
大動脈二尖弁による狭窄症では、40〜50代で発症して、比較的急速に進行するものもあります。
弁の石灰化は、加齢によるほか(10年で約2倍)、高血圧(1.7倍)や肥満(5s増えると1.4倍)があると増加し、死亡率を4倍にするといわれています。
喫煙や糖尿病との関連は今のところ少ないとされていますが、コレステロールとの関連を示唆する報告もあります。
石灰化は、男性より女性にやや多くみられます。
幸い、軽度の閉鎖不全症はほとんど進行することはありませんが、大動脈弁の閉鎖不全や狭窄症では、かなり重症になるまで症状がないことが多く、注意を要します。
とくに、ある時点をすぎると(狭窄に伴う大動脈弁をはさんで左心室と大動脈で圧較差が40〜50oHg以上)、進行が速くなり手術を要する例もあるので、注意深く経過をみる必要があります。
典型的な症状としては、心臓のあたりがとても痛くなる狭心痛、失神、息ができない苦しさなどの心不全症状が知られていますが、これらの症状が現れた時はすでに重症で、予後不良の兆候です。
熟練した循環器専門医であれば、大動脈弁疾患の有無の診断や閉鎖不全症の進行度の判定も聴診だけでほとんど可能ですが、狭窄症の程度を正確に判定することは必ずしも簡単ではありません。
胸部X線、心電図、心エコー(超音波)が大変有効です。
手術の要否が問題となる場合は、10%以上に合併するとされる虚血性心疾患の有無を判定するために、心臓カテーテル検査が必要です。
手術の必要がなく、自覚症状がない場合では、合併症の治療が主となります。
10〜20%の人に、不整脈の一種の心房細動(しんぼうさいどう)がみられます。
心房細動では、心房内に血液がよどんで血栓ができやすく、また心拍数に対する自律神経の調節が効きにくいので、運動・興奮・発熱などですぐに頻脈になり、脳血栓(のうけっせん)や心不全(しんふぜん)を起こしやすいことが知られています。
血栓予防のための薬剤(ワルファリン)による抗凝固療法と、頻脈予防のために心拍数のコントロール(β(ベータ)遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤など)が必要です。
胃潰瘍や脳出血後間もないなど、出血の危険性が高いケースで、抗凝固療法ができない場合は、代わりに抗血小板療法と胃潰瘍予防薬の併用や、血栓予防を行わない選択をすることもあります。
重症の心不全に対しては、塩分制限、安静のほか、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、強心薬などが適宜使用されます。
しかし、狭心痛、失神、心不全などの症状がある時は、内科的治療よりも外科的治療のほうが予後がよいとされ(70歳以上でも5年生存率約80%)、ほかに重大な病気がなければ、最近では80歳前後でも外科的治療法を考慮すべきです。
待期的弁置換(ちかん)手術の危険度は、若〜壮年者より高くはなるものの、許容できる範囲になってきています。
また、高齢者では耐用性において若干不利でも、手術後の抗凝固療法を必要としない生体弁を利用したり、弁の形態に工夫をして有効弁口面積を大きくした人工弁を採用することで、術後の生活の質(QOL)の改善を図ることなどが行われています。
鼠径部(そけいぶ)(脚の付け根)の動脈から挿入した風船付きカテーテルによる大動脈弁形成術は、70%近くに再狭窄が起こること、死亡や緊急手術に至る危険性が高いことなどから、緊急の場合を除いて積極的には行われなくなっています。
近年、器具の改良が進み、カテーテルによる人工弁の留置などの新たな手技が開発されつつありますが、日本では器具の認可の問題もあり、まとまった報告はまだほとんどないようです。
僧帽弁置換(ちかん)手術は大動脈弁置換手術よりリスクが少し高くなりますが、症状が出ている場合には内科的治療に比べて、生活の質の向上とその後の体力の回復が見込めます。
いかがでしたか。
では次回のイルネス辞典をお楽しみに〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院