(403)サンデーイルネス(仮)有毒植物による食中毒について1話
2024年11月17日 [からだのこと]
お疲れ様です。院長です。
11月17日のサンデーイルネスでございます。
ボチボチ冬感が出てきましたね。
朝晩はもうすっかり冬ですな。
てことで、本題に入りましょう。
今日から3回にわたり、「有毒植物による食中毒」について解説していきたいと思います。
今日は第一回ってことですね。
有毒植物は世界の各地に存在します。
以下、症状を起こす主な毒物について、大まかな分類にしたがって説明します。
呼吸麻痺を起こす植物毒
中毒により、さまざまな症状を示す場合がありますが、最終的に呼吸麻痺を起こして死亡するものをこの項目に入れます。
まず、キンポウゲ科の植物には猛毒性のものが多く、なかでもトリカブトとキンポウゲは一般になじみが深いものです。
(1)トリカブト
この植物は毒草として有名ですが、同じキンポウゲ科のニリンソウやキク科のモミジガサなどとよく似ているので、間違えて食べるケースが数多くあります。
トリカブトの根は、昔から「附子(ぶし)」および「烏頭(うづ)」として漢方処方の重要な生薬で、新陳代謝の衰えた人に投与すると強心作用を現します。
また、ヨーロッパの民間療法であるホメオパシー(類似療法)ではかぜ薬としても用いています。
ただし、量を誤ると中毒を引き起こし、呼吸中枢麻痺、心伝導障害、循環系、知覚および運動神経の麻痺などを起こします。
ある程度の中毒量を用いた場合、個人差はありますが、まず唇、腹部、皮膚などに灼熱感(しゃくねつかん)またはアリがはいまわるような感覚があり、よだれ、嘔吐、めまい、下痢を起こします。
さらに知覚および中枢麻痺を起こして歩行や呼吸が困難になり、昏睡(こんすい)状態になります。死亡までに1〜数時間かかります。
致死量は、トリカブトの根で約2〜4g、成分であるアコニチンで約5rです。
成分的には、ジテルペン系のアルカロイドのアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、エサコニチンなどを含みますが、毒性はアコニチンで代表されています。
加熱などによってエステルが加水分解されると、毒性は百分の1以下に減少します。漢方では、これを利用して加熱減毒した加工附子を用いています。
中毒の対処法としては、胃洗浄、保温、強心剤、マグネシウムやカルシウムの投与などがあります。また、徐脈(じょみゃく)に対してはアトロピンが、不整脈に対してはリドカインが有効です。
以下のものでも対処は同様です。
(2)キンポウゲ
ウマノアシガタとも呼ばれ、成分としてアネモニンを含み、多量では心臓毒として作用し、心臓の運動機能を停止させます。
マウスによる実験では、嘔吐、下痢、血尿、血便、瞳孔(どうこう)散大などの中毒症状を現し、大量に与えると知覚麻痺、呼吸困難、けいれんを起こして死亡します。
(3)シュロソウ、バイケイソウ
ユリ科植物で、かつては血圧降下薬として用いられたこともありました。
毒性の強いステロイド系のアルカロイドを含んでいて、大量に摂取すると中枢性の呼吸抑制が起こり、呼吸停止により死亡します。
成分であるジェルビンの毒性はアコニチンに匹敵するといわれ、現在は農薬としてわずかに用いられているにすぎません。
ジャガイモの芽生えの部分に含まれるステロイド系アルカロイドのソラニンも有毒性です。誤って食べると嘔吐、下痢を起こし、呼吸困難を起こします。
(4)ドクゼリ
セリ科に属し猛毒性をもつ植物のひとつで、毒性の強いシクトキシンを含んでいます。
主に根に含まれますが、非常に吸収されやすいので、誤って食べると数分後には中毒症状が現れます。
口から泡を吹き、中枢神経が侵され、けいれん、めまい、嘔吐、皮膚の発赤が現れ、最後に呼吸麻痺を起こして死亡します。
(5)ドクニンジン
同じくセリ科で、全草に猛毒性のアルカロイド、コニインを含んでいます。
まず中枢神経を興奮させ、のちに麻痺を起こし運動神経末梢を麻痺させます。
その結果、よだれ、呼吸麻痺を起こして死亡します。
歴史的に有名なソクラテスの獄中毒殺では、この植物が使われました。
(6)ハシリドコロ
ナス科の植物には毒性をもつものが多く、日本の山野に自生するハシリドコロは、ヒヨスシアミン、アトロピン(dl‐ヒヨスシアミン)、スコポラミンなどのトロパン系アルカロイドを含んでいます。
根はロート根と呼ばれて薬用にされますが、山菜の時期に誤って食べると狂奔(きょうほん)して走りまわるので、ハシリドコロという名がつけられたそうです。
ハシリドコロとトリカブトは拮抗作用があるといわれています。
ヨーロッパでは、古くからベラドンナ、ヒヨス、ダツラ(ヨウシュチョウセンアサガオ)などが鎮痛・鎮痙薬(ちんけいやく)として用いられました。
これらのアルカロイドには抗コリン作用があり、瞳孔散大、制酸、鎮痛に用いられます。
ヒヨスシアミンは量が多いと狂騒(きょうそう)状態を引き起こし、ついには呼吸麻痺によって死亡します。
華岡青州の麻酔薬には、マンダラ葉(ダツラ)が処方されたといわれています。
(7)フジモドキ
ジンチョウゲ科に属し、ゲンカニン、ヒドロキシゲンカニンなどを含み、その毒性はトウダイグサ科の甘遂(かんすい)や大戟(だいげき)よりも強いといわれています。
ラットの実験では死亡の前にけいれん現象があり、多くは呼吸衰弱によって死亡します。
(8)ドクウツギ
山野の荒地に自生し、紅紫色のきれいな実をつけるので誤って食べやすいものです。
猛毒性のコリアミルチンやツチンを含み、ピクロトキシン様の作用を現します。
脊髄(せきずい)より上位の中枢を刺激して激烈なけいれんを起こし、のちに麻痺させて呼吸停止により死に至ります。
主な中毒症状は悪心(おしん)(吐き気)、嘔吐、全身硬直、口唇紫変、瞳孔縮小などで、葉約24gが致死量です。
(9)青酸配糖体(せいさんはいとうたい)を含む植物
青酸配糖体それ自体は毒性を発揮しませんが、青酸を遊離するためチトクロームオキシダーゼを阻害し、体内呼吸を止めて死に至らせます。
アンズ、ウメ、アーモンド、サクラなどのバラ科植物の果実、種子に含まれるアミグダリンは鎮咳(ちんがい)・去痰薬(きょたんやく)として用いられますが、大量に用いるか古いものを用いると、青酸中毒を起こします。
その他の青酸配糖体として、キク科のロタウトラリン、マメ科やトウダイグサ科のキャッサバに含まれるリナマリン、またバクチノキに含まれるプルナシンなどがあります。
いずれも腸内細菌のβ(ベータ)‐グルコシダーゼのはたらきによってヒドロキシニトリルを生じ、さらにヒドロキシニトリル分解酵素の作用を受けて青酸を遊離します。
いかがでしたか。
では、次回のイルネス辞典をお楽しみに〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院
11月17日のサンデーイルネスでございます。
ボチボチ冬感が出てきましたね。
朝晩はもうすっかり冬ですな。
てことで、本題に入りましょう。
今日から3回にわたり、「有毒植物による食中毒」について解説していきたいと思います。
今日は第一回ってことですね。
有毒植物は世界の各地に存在します。
以下、症状を起こす主な毒物について、大まかな分類にしたがって説明します。
呼吸麻痺を起こす植物毒
中毒により、さまざまな症状を示す場合がありますが、最終的に呼吸麻痺を起こして死亡するものをこの項目に入れます。
まず、キンポウゲ科の植物には猛毒性のものが多く、なかでもトリカブトとキンポウゲは一般になじみが深いものです。
(1)トリカブト
この植物は毒草として有名ですが、同じキンポウゲ科のニリンソウやキク科のモミジガサなどとよく似ているので、間違えて食べるケースが数多くあります。
トリカブトの根は、昔から「附子(ぶし)」および「烏頭(うづ)」として漢方処方の重要な生薬で、新陳代謝の衰えた人に投与すると強心作用を現します。
また、ヨーロッパの民間療法であるホメオパシー(類似療法)ではかぜ薬としても用いています。
ただし、量を誤ると中毒を引き起こし、呼吸中枢麻痺、心伝導障害、循環系、知覚および運動神経の麻痺などを起こします。
ある程度の中毒量を用いた場合、個人差はありますが、まず唇、腹部、皮膚などに灼熱感(しゃくねつかん)またはアリがはいまわるような感覚があり、よだれ、嘔吐、めまい、下痢を起こします。
さらに知覚および中枢麻痺を起こして歩行や呼吸が困難になり、昏睡(こんすい)状態になります。死亡までに1〜数時間かかります。
致死量は、トリカブトの根で約2〜4g、成分であるアコニチンで約5rです。
成分的には、ジテルペン系のアルカロイドのアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、エサコニチンなどを含みますが、毒性はアコニチンで代表されています。
加熱などによってエステルが加水分解されると、毒性は百分の1以下に減少します。漢方では、これを利用して加熱減毒した加工附子を用いています。
中毒の対処法としては、胃洗浄、保温、強心剤、マグネシウムやカルシウムの投与などがあります。また、徐脈(じょみゃく)に対してはアトロピンが、不整脈に対してはリドカインが有効です。
以下のものでも対処は同様です。
(2)キンポウゲ
ウマノアシガタとも呼ばれ、成分としてアネモニンを含み、多量では心臓毒として作用し、心臓の運動機能を停止させます。
マウスによる実験では、嘔吐、下痢、血尿、血便、瞳孔(どうこう)散大などの中毒症状を現し、大量に与えると知覚麻痺、呼吸困難、けいれんを起こして死亡します。
(3)シュロソウ、バイケイソウ
ユリ科植物で、かつては血圧降下薬として用いられたこともありました。
毒性の強いステロイド系のアルカロイドを含んでいて、大量に摂取すると中枢性の呼吸抑制が起こり、呼吸停止により死亡します。
成分であるジェルビンの毒性はアコニチンに匹敵するといわれ、現在は農薬としてわずかに用いられているにすぎません。
ジャガイモの芽生えの部分に含まれるステロイド系アルカロイドのソラニンも有毒性です。誤って食べると嘔吐、下痢を起こし、呼吸困難を起こします。
(4)ドクゼリ
セリ科に属し猛毒性をもつ植物のひとつで、毒性の強いシクトキシンを含んでいます。
主に根に含まれますが、非常に吸収されやすいので、誤って食べると数分後には中毒症状が現れます。
口から泡を吹き、中枢神経が侵され、けいれん、めまい、嘔吐、皮膚の発赤が現れ、最後に呼吸麻痺を起こして死亡します。
(5)ドクニンジン
同じくセリ科で、全草に猛毒性のアルカロイド、コニインを含んでいます。
まず中枢神経を興奮させ、のちに麻痺を起こし運動神経末梢を麻痺させます。
その結果、よだれ、呼吸麻痺を起こして死亡します。
歴史的に有名なソクラテスの獄中毒殺では、この植物が使われました。
(6)ハシリドコロ
ナス科の植物には毒性をもつものが多く、日本の山野に自生するハシリドコロは、ヒヨスシアミン、アトロピン(dl‐ヒヨスシアミン)、スコポラミンなどのトロパン系アルカロイドを含んでいます。
根はロート根と呼ばれて薬用にされますが、山菜の時期に誤って食べると狂奔(きょうほん)して走りまわるので、ハシリドコロという名がつけられたそうです。
ハシリドコロとトリカブトは拮抗作用があるといわれています。
ヨーロッパでは、古くからベラドンナ、ヒヨス、ダツラ(ヨウシュチョウセンアサガオ)などが鎮痛・鎮痙薬(ちんけいやく)として用いられました。
これらのアルカロイドには抗コリン作用があり、瞳孔散大、制酸、鎮痛に用いられます。
ヒヨスシアミンは量が多いと狂騒(きょうそう)状態を引き起こし、ついには呼吸麻痺によって死亡します。
華岡青州の麻酔薬には、マンダラ葉(ダツラ)が処方されたといわれています。
(7)フジモドキ
ジンチョウゲ科に属し、ゲンカニン、ヒドロキシゲンカニンなどを含み、その毒性はトウダイグサ科の甘遂(かんすい)や大戟(だいげき)よりも強いといわれています。
ラットの実験では死亡の前にけいれん現象があり、多くは呼吸衰弱によって死亡します。
(8)ドクウツギ
山野の荒地に自生し、紅紫色のきれいな実をつけるので誤って食べやすいものです。
猛毒性のコリアミルチンやツチンを含み、ピクロトキシン様の作用を現します。
脊髄(せきずい)より上位の中枢を刺激して激烈なけいれんを起こし、のちに麻痺させて呼吸停止により死に至ります。
主な中毒症状は悪心(おしん)(吐き気)、嘔吐、全身硬直、口唇紫変、瞳孔縮小などで、葉約24gが致死量です。
(9)青酸配糖体(せいさんはいとうたい)を含む植物
青酸配糖体それ自体は毒性を発揮しませんが、青酸を遊離するためチトクロームオキシダーゼを阻害し、体内呼吸を止めて死に至らせます。
アンズ、ウメ、アーモンド、サクラなどのバラ科植物の果実、種子に含まれるアミグダリンは鎮咳(ちんがい)・去痰薬(きょたんやく)として用いられますが、大量に用いるか古いものを用いると、青酸中毒を起こします。
その他の青酸配糖体として、キク科のロタウトラリン、マメ科やトウダイグサ科のキャッサバに含まれるリナマリン、またバクチノキに含まれるプルナシンなどがあります。
いずれも腸内細菌のβ(ベータ)‐グルコシダーゼのはたらきによってヒドロキシニトリルを生じ、さらにヒドロキシニトリル分解酵素の作用を受けて青酸を遊離します。
いかがでしたか。
では、次回のイルネス辞典をお楽しみに〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院