毒々モンスター
2021年05月19日 [からだのこと]
お疲れ様です。院長です。
5月19日の水曜日でございます。
連休が明けてから2週間程たちましたし、さすがに身体も仕事モードに戻りましたかね。
仕事モードに戻った途端の梅雨入りでしたから、これはこれで身体が怠かったりするんですけどねぇ…。
ま、梅雨も慣れればそれなりになりますし、もう少し頑張りましょうぞ。
そんな梅雨の真っ只中、今日のネタは「毒」についてのお話しでございます。
ベノムとかポイズンとかいう言葉は、「毒」と言う意味ですが、一言に毒と言っても色々あります。
自然界には猛毒で獲物を仕留める動物や、天敵を毒殺する植物が多数存在しますが、人間は今のところ毒を利用するのみで、自らの体内に「毒腺」が備わっているわけではありません。
ですが、最新の研究によれば、少なくとも毒液で武装するポテンシャルなら人間にもあるそうなんです。
それどころか、あらゆる爬虫類と哺乳類には毒を作り出す土台となるものが備わっているらしいんです。
毒を生成するのに関連する器官は唾液腺なんだとか…。
因みに唾液腺とは、ヒトの場合、唾液を産生し分泌する組織で、唾液腺で作られた唾液は、唾液腺管という管の中を通って口の中に流れ出てきます。
唾液腺は体内に複数存在していて、大唾液腺と小唾液腺に分けられ、さらに大唾液腺は耳下腺(じかせん)、顎下腺(がくかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3種類に分けられます。
耳下腺は耳の下、顎下腺はあごの下、舌下腺は舌の下にある唾液腺ですな。
なお、小唾液腺は口の中に多数分布しています。
で、話を戻すと、毒を作る土台とは、唾液腺に関係している遺伝子のことなんだそうです。
クモやヘビなど、口から毒を分泌する動物はたくさんいます(なお霊長類では、唯一スローロリスが持つそうです)。
じつはこうした口内の毒腺は、唾液腺が変化したものなんだそうです。
唾液腺の遺伝子はとても柔軟で、動物界では個別に100度も毒の進化が起きています。
それでいて、生物毒に含まれる毒素の多くは、さまざまな種に共通して見ることができます。
たとえばムカデの毒の成分は、ヘビ毒にも含まれていたりします。
今回、沖縄科学技術大学院大学に在学する博士課程の学生アグニーシュ・バルア氏らは、毒に関連している「ハウスキーピング遺伝子」(細胞の基本機能を維持するために不可欠な遺伝子の総称)を調査しました。
その結果、沖縄で生息域を拡大している外来種のタイワンハブから、あらゆる「有羊膜類(ゆうようまくるい)」(胚に羊膜がある動物。爬虫類、鳥、哺乳類など)の組織に共通する遺伝子セットを発見したんだそうです。
それらの多くはタンパク質の折りたたみに関係してるもので、バルア氏によれば、毒素がタンパク質から作られることを考えれば、理にかなっているということらしいです。
で、同じハウスキーピング遺伝子は人間の唾液腺からも見つかっています。
ちなみに唾液腺もまた大量にタンパク質を作り出す器官です。
こうした遺伝的な土台があるからこそ、動物たちの間ではさまざまな毒が独自に進化することができたわけです。
哺乳類やは虫類ならば、どの生物にも口から毒を分泌するシステムの基礎が備わっているということですな。
もちろん、それは人間も含めてです。
その証拠に、人間は色々な毒分泌システムで使われている重要なタンパク質を生産しています。
それは「カリクレイン」という唾液に含まれるタンパク質で、他のタンパク質を消化する力があります。
カリクレインはとても安定しており、突然変異したからといっていきなり機能しなくなったりはしないと考えられます。
そのおかげで、変異したときに、より苦痛を与え、より殺傷力(たとえば血圧を急激に低下させる)のある毒になりやすいんだとか…。
ゆえにカリクレインは、人間が毒液を発達させるための理論的なスタート地点になるんだそうです。
ですが現実には、人間が今の食生活やパートナー探しをしている限り、その可能性は低そうです。
生物が毒を進化させる理由は、身を守るためか、獲物を仕留めるためですが、それは自然選択によってその種のニーズに合わせたものになります。
たとえば、ある砂漠のヘビは同じ種であっても生活環境によって毒の種類が異なるんだそうです。
ひらけたところに生息するヘビなら、その毒は循環器系に効くそうです。
彼らの主な獲物はネズミですが、こうした環境ならすぐに殺さなくても、毒で弱った個体を追跡するのはさして難しくありません。
ところが主な獲物がトカゲになる岩がちな山岳部では、強力な神経毒になるそうです。
即座に仕留めることができなければ、岩陰などにすぐに逃げられてしまうからだと考えられます。
一方、人間も独自の道具や社会構造を発達させてきたわけですが、食料を獲得するためにも、パートナーを獲得するためにも、毒を使う必要性は今のところありません。
毒を作るという行為は、必要なタンパク質を生産するためにエネルギーを消費する行為でもあるわけですから、無駄に発達させる必要はありませんし、使われなければ簡単に消えてしまいます。
たとえば、ウミヘビの仲間には退化した毒腺を持つものがいるそうです。
それらはかつて魚を食べていましたが、卵を食べて生きることにしたために、獲物を仕留める毒が必要なくなり、結果としてそれを失ったんだとか…。
なお生物の毒は危険なものでありながら、その背後にある遺伝子を理解すれば、医療に応用できるかもしれないそうなんです。
たとえばコブラの強力な毒を作り出す遺伝子が、脳の中でも発現してしまえば、その個体はあっという間に死んでしまうでしょう。
そうならないよう、コブラは異なる組織における遺伝子の発現をコントロールしているはずなんです。
その方法が解明されれば、がんなどの治療に役立つかもしれないそうなんです。
というのも、がんによる症状の主な原因は、組織が無秩序に成長し、間違った場所に本来あるべきではない物質を分泌してしまうことだからです。
つまり、こうしたものを「毒」で制すことができるかもしれないってことですな。
まぁ、最終的に話が逸れ倒した気もしますが、人間はこの「知能」のおかげで、毒が作れないんでしょうね。
ではまた〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院
5月19日の水曜日でございます。
連休が明けてから2週間程たちましたし、さすがに身体も仕事モードに戻りましたかね。
仕事モードに戻った途端の梅雨入りでしたから、これはこれで身体が怠かったりするんですけどねぇ…。
ま、梅雨も慣れればそれなりになりますし、もう少し頑張りましょうぞ。
そんな梅雨の真っ只中、今日のネタは「毒」についてのお話しでございます。
ベノムとかポイズンとかいう言葉は、「毒」と言う意味ですが、一言に毒と言っても色々あります。
自然界には猛毒で獲物を仕留める動物や、天敵を毒殺する植物が多数存在しますが、人間は今のところ毒を利用するのみで、自らの体内に「毒腺」が備わっているわけではありません。
ですが、最新の研究によれば、少なくとも毒液で武装するポテンシャルなら人間にもあるそうなんです。
それどころか、あらゆる爬虫類と哺乳類には毒を作り出す土台となるものが備わっているらしいんです。
毒を生成するのに関連する器官は唾液腺なんだとか…。
因みに唾液腺とは、ヒトの場合、唾液を産生し分泌する組織で、唾液腺で作られた唾液は、唾液腺管という管の中を通って口の中に流れ出てきます。
唾液腺は体内に複数存在していて、大唾液腺と小唾液腺に分けられ、さらに大唾液腺は耳下腺(じかせん)、顎下腺(がくかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3種類に分けられます。
耳下腺は耳の下、顎下腺はあごの下、舌下腺は舌の下にある唾液腺ですな。
なお、小唾液腺は口の中に多数分布しています。
で、話を戻すと、毒を作る土台とは、唾液腺に関係している遺伝子のことなんだそうです。
クモやヘビなど、口から毒を分泌する動物はたくさんいます(なお霊長類では、唯一スローロリスが持つそうです)。
じつはこうした口内の毒腺は、唾液腺が変化したものなんだそうです。
唾液腺の遺伝子はとても柔軟で、動物界では個別に100度も毒の進化が起きています。
それでいて、生物毒に含まれる毒素の多くは、さまざまな種に共通して見ることができます。
たとえばムカデの毒の成分は、ヘビ毒にも含まれていたりします。
今回、沖縄科学技術大学院大学に在学する博士課程の学生アグニーシュ・バルア氏らは、毒に関連している「ハウスキーピング遺伝子」(細胞の基本機能を維持するために不可欠な遺伝子の総称)を調査しました。
その結果、沖縄で生息域を拡大している外来種のタイワンハブから、あらゆる「有羊膜類(ゆうようまくるい)」(胚に羊膜がある動物。爬虫類、鳥、哺乳類など)の組織に共通する遺伝子セットを発見したんだそうです。
それらの多くはタンパク質の折りたたみに関係してるもので、バルア氏によれば、毒素がタンパク質から作られることを考えれば、理にかなっているということらしいです。
で、同じハウスキーピング遺伝子は人間の唾液腺からも見つかっています。
ちなみに唾液腺もまた大量にタンパク質を作り出す器官です。
こうした遺伝的な土台があるからこそ、動物たちの間ではさまざまな毒が独自に進化することができたわけです。
哺乳類やは虫類ならば、どの生物にも口から毒を分泌するシステムの基礎が備わっているということですな。
もちろん、それは人間も含めてです。
その証拠に、人間は色々な毒分泌システムで使われている重要なタンパク質を生産しています。
それは「カリクレイン」という唾液に含まれるタンパク質で、他のタンパク質を消化する力があります。
カリクレインはとても安定しており、突然変異したからといっていきなり機能しなくなったりはしないと考えられます。
そのおかげで、変異したときに、より苦痛を与え、より殺傷力(たとえば血圧を急激に低下させる)のある毒になりやすいんだとか…。
ゆえにカリクレインは、人間が毒液を発達させるための理論的なスタート地点になるんだそうです。
ですが現実には、人間が今の食生活やパートナー探しをしている限り、その可能性は低そうです。
生物が毒を進化させる理由は、身を守るためか、獲物を仕留めるためですが、それは自然選択によってその種のニーズに合わせたものになります。
たとえば、ある砂漠のヘビは同じ種であっても生活環境によって毒の種類が異なるんだそうです。
ひらけたところに生息するヘビなら、その毒は循環器系に効くそうです。
彼らの主な獲物はネズミですが、こうした環境ならすぐに殺さなくても、毒で弱った個体を追跡するのはさして難しくありません。
ところが主な獲物がトカゲになる岩がちな山岳部では、強力な神経毒になるそうです。
即座に仕留めることができなければ、岩陰などにすぐに逃げられてしまうからだと考えられます。
一方、人間も独自の道具や社会構造を発達させてきたわけですが、食料を獲得するためにも、パートナーを獲得するためにも、毒を使う必要性は今のところありません。
毒を作るという行為は、必要なタンパク質を生産するためにエネルギーを消費する行為でもあるわけですから、無駄に発達させる必要はありませんし、使われなければ簡単に消えてしまいます。
たとえば、ウミヘビの仲間には退化した毒腺を持つものがいるそうです。
それらはかつて魚を食べていましたが、卵を食べて生きることにしたために、獲物を仕留める毒が必要なくなり、結果としてそれを失ったんだとか…。
なお生物の毒は危険なものでありながら、その背後にある遺伝子を理解すれば、医療に応用できるかもしれないそうなんです。
たとえばコブラの強力な毒を作り出す遺伝子が、脳の中でも発現してしまえば、その個体はあっという間に死んでしまうでしょう。
そうならないよう、コブラは異なる組織における遺伝子の発現をコントロールしているはずなんです。
その方法が解明されれば、がんなどの治療に役立つかもしれないそうなんです。
というのも、がんによる症状の主な原因は、組織が無秩序に成長し、間違った場所に本来あるべきではない物質を分泌してしまうことだからです。
つまり、こうしたものを「毒」で制すことができるかもしれないってことですな。
まぁ、最終的に話が逸れ倒した気もしますが、人間はこの「知能」のおかげで、毒が作れないんでしょうね。
ではまた〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院