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2024年09月18日 [からだのこと]

トキソプラズマの冒険

お疲れ様です。院長です。

9月18日の水曜日でございます。

本日は、「世界で初めて組織的に視覚障害者教育が始まった日」なんでそうです。

江戸時代の全盲の鍼灸師・杉山和一(すぎやま わいち、1610〜1694年)検校(けんぎょう:役職名)は、無痛で正確に鍼(はり)を刺すことができる画期的な治療法「管鍼術(かんしんじゅつ)」を考案、視覚障害者に技術を伝えるため私塾を開いたのがこの日だとか…。

では今日も元気にネタいきましょう。

動物の脳に侵入する寄生虫を遺伝子改変することで、いつの日か大切な薬を患部に送り届ける運び屋になってくれるかもしれません。

その寄生虫はトキソプラズマです。

米国マサチューセッツ工科大学の研究チームが考案したのは、トキソプラズマを脳の治療薬を分泌するよう改変し、それを脳に寄生させることで病気を治すという大胆なアイデアです。

人間の脳オルガノイドや生きたマウスを使った実験では、実際に改変したトキソプラズマによって遺伝子発現が変化することが確認されました。

この方法は、脳の病気の新しい治療としてだけでなく、神経細胞内のタンパク質の働きを調べる強力な研究ツールになると期待されています。

私たちの思考や精神を担う脳は決して無防備ではありません。

外側からは頭蓋骨で、内側からは「血液脳関門」というバリアによって守られています。

血液脳関門は、その名の通り、脳に流れ込む血液の門として働き、そこから入り込もうとする異物の侵入を断固防ぎます。

これは私たちが生きるうえでとても大切な機能ですが、ごく特殊な状況で困ったことになる場合もあります。

というのも、血液脳関門のおかげでほとんどのタンパク質が脳内に入れないんですね。

このことは、脳の病気を治す薬を血管に注射しても、患部に届かないということでもあるわけです。

ところが、「トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)」という寄生性原生生物の1種は、血液脳関門を突破する方法を身につけました。

トキソプラズマは、ネコ科動物を最終宿主とする寄生虫で、人間を含むほぼ全ての温血動物に感染し、世界人口の3分の1が感染していると推測されています。

トキソプラズマに寄生されると「トキソプラズマ症」を引き起こしますが、ほとんどの場合は免疫系により抑え込まれるため無症状か軽い風邪程度ですむんですが、免疫に問題のある人は重症化して、最悪の場合は失明したり、命を落としたりすることもあります。

また、妊婦が初感染すると胎児が先天性トキソプラズマ症を発症する場合があるので注意が必要です。

ですがマサチューセッツ工科大学の神経科学者シャハール・ブラハ氏らは、このトキソプラズマの力をどうにか有効活用できないだろうかと考えました。

脳に侵入したトキソプラズマは、3種類の細胞小器官から分泌される物質で神経細胞に影響を与えます。

そこで考案されたのは、そのうちの2種を改造することで、脳の病気を治すタンパク質を分泌させるというアイデアでした。

「MeCP2」というタンパク質は、「レット症候群」という遺伝性の神経発達障害に対して治療効果があります。

ならばこのタンパク質を分泌するトキソプラズマを脳に寄生させれば、病気を治すことができるかもしれないと考えたわけです。

研究チームはこのアイデアを人間の「脳オルガノイド」(人間の細胞から培養されるミニ脳)で試してみました。

するとトキソプラズマが分泌したタンパク質は、研究チームの狙い通りに脳オルガノイドのDNAに結合し、遺伝子の発現が変化したことが確認されました。

またこの方法が生きている生物にも通用するのか確かめるため、改変トキソプラズマをマウスにも感染させました。

この実験でも、タンパク質が脳に届けられただろうこと(最小限の炎症もあったという)が確認されています。

トキソプラズマに感染しても、人間を含む健康な動物ではほとんど感染症を起こさないことから、うまく利用できる可能性があると考えられます。

それでも、有効性や安全性を確実なものにするために、さらなる研究が必要となりますが…。

リスクを完全に回避することができれば、この方法は脳の治療に役立つだけでなく、神経細胞におけるタンパク質の働きを調べるなど、強力な研究ツールにもなるとのことです。

これはスゴイトコに目を付けましたねぇ。

この研究も今後に期待ですな。

ではまた〜。







京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院


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