2024年03月25日 [からだのこと]
ADHDと冒険者
お疲れ様です。院長です。
3月25日月曜日でございます。
3月も最終週となりましたねぇ。
まだまだ寒い日もありますが、4月となると春ですな。
ではネタにいきましょう。
今日はADHDに関する、ちょっとかわった視点からのお話しです。
発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動症)は、最近でこそ、その名が定着してきましたが、落ち着きがない、様々なものに興味が移るといた特性はずっと昔から知られており、何世紀も前からさまざまな名称で呼ばれてきました。
最近の研究では、ADHDは特定の遺伝子が関与していて、遺伝性が高いことが明らかになっています。
つまり、親から子へとその遺伝子が受け継がれており、ADHDに特徴的な特性は、大昔の人間の遺伝子に組み込まれていただろうことを示しているそうです。
だとするなら、ADHDには何か進化上のメリットがあったのではないだろうか?と…。
最新の研究がその謎を明らかにしているんです。
ADHD(注意欠損・多動症)の症状の出方は人によって様々ですが、一般的には、気が散りやすい、じっとしていられない、衝動的になる、注意力が欠ける、などの特性があります。
ですが興味の対象が移りやすく、突発的な行動を起こすなどといった特性は、「冒険者」としては優位に働くのかもしれません。
新たな研究によれば、こうした特徴は我々の先祖が、狩猟採集生活のような自然の中で食べ物を探さねばならない状況では、生存に有利に働いたと考えられるそうなんです。
米国ペンシルベニア大学の研究チームが行なった実験では、ADHD傾向にある人ほど、「最適採餌理論(さいてきさいじりろん)」から予測されるもっとも有利な行動をとることが明らかになっています。
最適採餌理論 とは、食物探索行動を予測する際に用いられる行動生態学における最適化モデルのことで、生物は食物を食べることによってエネルギーを得ますが、同時に食物の探索や捕獲にはエネルギーや時間がかかります。
そこで、自身の適応度を最大化させようと、より少ないコストでより多い利益(エネルギー)を得る採餌戦略を採用していると考えられるわけです。
たとえば、あなたが大昔の狩猟採集民で、食べ物を求めて仲間と一緒に森をさまよっていたとします。
そしてある時、果物がたわわに実ったまるで果樹園のような場所にたどり着いたと…。
さて、あなたはこの果樹園に腰を落ち着けて、果物を食べ尽くすまでそこに滞在するでしょうか?
それとも今採れるだけ採ったら、また別の食べ物を求めてさっさと出発するでしょうか?
こうした決断は、あらゆる生物の生存に関係する基本的なものです。
どちらにもメリットとデメリットがあり、どちらが有利かはおそらくその時の状況や環境によっても左右されるでしょう。
2000年代初め、ある研究チームは、ケニア北部で暮らすアリアール族の遺伝子を調べました。
この部族は、昔から遊牧民的な生活を送っていましたが、20世紀になるとその一部は定住するようになりました。
そこで遊牧生活を続けたアリアール族と定住したアリアール族の遺伝子や健康を比べてみたところ、とても面白いことが判明したそうなんです。
基本的にアリアール族は全員が「DRD4/7R」という遺伝子変異を持っていました。
これはADHDの患者にもよく見られ、落ち着きのなさや注意力のなさと関係するとされているものです。
そして、あまり体を動かすことがない定住生活を選んだアリアール族の子供たちの場合、この突然変異は健康状態の悪さや、授業に集中できないといったことと関係していました。
ところが相変わらず遊牧生活を続けているアリアール族では、体の強さや栄養状態の良さと関係していたそうなんです。
ここから興味深い仮説が浮上してきます。
もしかしたら、ADHDの背後にある遺伝子は、それを持つ人を”冒険者”にすることで、生存を有利にしたのではないだろうかと…。
現代社会において、そわそわした落ち着きのなさは悪くとらえられがちですが、自然を探索して食べ物を探さねばならない人間にとっては都合がいいのかもしれません。
今回ペンシルベニア大学のデビッド・バラック氏らは、この仮説を検証するために次のようなゲームを行なってみました。
画面に茂みが表示されるので、参加者(約450人)はマウスのカーソルをその上に置いて、できるだけ多くの果物を集めます。
ただし同じ茂みで果物を採るたびに、収穫量は少しずつ減っていきます。
ですが新しい茂みにポインターを移動させれば、その分時間がかかると…。
そう、このゲームは先述した果樹園にたどり着いたグループの状況を再現したものです。
さて、8分間の制限時間内に一番果物を手にできたのは誰だったでしょうか?
結果、果物をたくさん収穫できたのは、実験とあわせて行われた検査でADHDの傾向が高いとされた人たちでした。
こうした人たちは、ADHDスコアが低い人に比べて、次から次へと新しい茂みに移動しがちでしたが、そのおかげで全体的な収穫量が多かったと…。
これについてバラック氏らは論文で、「全体として参加者が滞在しすぎていたことを考えると、探索を続けたADHD傾向の参加者は、最適採餌理論の予測により一致しており、この意味で、より最適に行動した」と述べています。
こうした結果は、ADHDの進化上のメリットに関する最終的な答えではありませんが、現代では病気とされるこの症状が単純に悪いものではなく、状況次第ではその人を助けてくれる可能性があることを示しています。
2015年にも、米ニューヨーク、ワイル・コーネル医科大学のリチャード・フリードマン教授が、ADHDの特性は狩猟採取時代に優位に働いていたとする報告行ないましたが、今回の研究はこれを裏付ける形となったようです。
なるほどねぇ。
現在、もし、このADHDで悩んでる人がいるとしたら、こういった少し視点を変えてみると、意外な「良さ」が見つかるかもしれませんね。
ではまた〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院
3月25日月曜日でございます。
3月も最終週となりましたねぇ。
まだまだ寒い日もありますが、4月となると春ですな。
ではネタにいきましょう。
今日はADHDに関する、ちょっとかわった視点からのお話しです。
発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動症)は、最近でこそ、その名が定着してきましたが、落ち着きがない、様々なものに興味が移るといた特性はずっと昔から知られており、何世紀も前からさまざまな名称で呼ばれてきました。
最近の研究では、ADHDは特定の遺伝子が関与していて、遺伝性が高いことが明らかになっています。
つまり、親から子へとその遺伝子が受け継がれており、ADHDに特徴的な特性は、大昔の人間の遺伝子に組み込まれていただろうことを示しているそうです。
だとするなら、ADHDには何か進化上のメリットがあったのではないだろうか?と…。
最新の研究がその謎を明らかにしているんです。
ADHD(注意欠損・多動症)の症状の出方は人によって様々ですが、一般的には、気が散りやすい、じっとしていられない、衝動的になる、注意力が欠ける、などの特性があります。
ですが興味の対象が移りやすく、突発的な行動を起こすなどといった特性は、「冒険者」としては優位に働くのかもしれません。
新たな研究によれば、こうした特徴は我々の先祖が、狩猟採集生活のような自然の中で食べ物を探さねばならない状況では、生存に有利に働いたと考えられるそうなんです。
米国ペンシルベニア大学の研究チームが行なった実験では、ADHD傾向にある人ほど、「最適採餌理論(さいてきさいじりろん)」から予測されるもっとも有利な行動をとることが明らかになっています。
最適採餌理論 とは、食物探索行動を予測する際に用いられる行動生態学における最適化モデルのことで、生物は食物を食べることによってエネルギーを得ますが、同時に食物の探索や捕獲にはエネルギーや時間がかかります。
そこで、自身の適応度を最大化させようと、より少ないコストでより多い利益(エネルギー)を得る採餌戦略を採用していると考えられるわけです。
たとえば、あなたが大昔の狩猟採集民で、食べ物を求めて仲間と一緒に森をさまよっていたとします。
そしてある時、果物がたわわに実ったまるで果樹園のような場所にたどり着いたと…。
さて、あなたはこの果樹園に腰を落ち着けて、果物を食べ尽くすまでそこに滞在するでしょうか?
それとも今採れるだけ採ったら、また別の食べ物を求めてさっさと出発するでしょうか?
こうした決断は、あらゆる生物の生存に関係する基本的なものです。
どちらにもメリットとデメリットがあり、どちらが有利かはおそらくその時の状況や環境によっても左右されるでしょう。
2000年代初め、ある研究チームは、ケニア北部で暮らすアリアール族の遺伝子を調べました。
この部族は、昔から遊牧民的な生活を送っていましたが、20世紀になるとその一部は定住するようになりました。
そこで遊牧生活を続けたアリアール族と定住したアリアール族の遺伝子や健康を比べてみたところ、とても面白いことが判明したそうなんです。
基本的にアリアール族は全員が「DRD4/7R」という遺伝子変異を持っていました。
これはADHDの患者にもよく見られ、落ち着きのなさや注意力のなさと関係するとされているものです。
そして、あまり体を動かすことがない定住生活を選んだアリアール族の子供たちの場合、この突然変異は健康状態の悪さや、授業に集中できないといったことと関係していました。
ところが相変わらず遊牧生活を続けているアリアール族では、体の強さや栄養状態の良さと関係していたそうなんです。
ここから興味深い仮説が浮上してきます。
もしかしたら、ADHDの背後にある遺伝子は、それを持つ人を”冒険者”にすることで、生存を有利にしたのではないだろうかと…。
現代社会において、そわそわした落ち着きのなさは悪くとらえられがちですが、自然を探索して食べ物を探さねばならない人間にとっては都合がいいのかもしれません。
今回ペンシルベニア大学のデビッド・バラック氏らは、この仮説を検証するために次のようなゲームを行なってみました。
画面に茂みが表示されるので、参加者(約450人)はマウスのカーソルをその上に置いて、できるだけ多くの果物を集めます。
ただし同じ茂みで果物を採るたびに、収穫量は少しずつ減っていきます。
ですが新しい茂みにポインターを移動させれば、その分時間がかかると…。
そう、このゲームは先述した果樹園にたどり着いたグループの状況を再現したものです。
さて、8分間の制限時間内に一番果物を手にできたのは誰だったでしょうか?
結果、果物をたくさん収穫できたのは、実験とあわせて行われた検査でADHDの傾向が高いとされた人たちでした。
こうした人たちは、ADHDスコアが低い人に比べて、次から次へと新しい茂みに移動しがちでしたが、そのおかげで全体的な収穫量が多かったと…。
これについてバラック氏らは論文で、「全体として参加者が滞在しすぎていたことを考えると、探索を続けたADHD傾向の参加者は、最適採餌理論の予測により一致しており、この意味で、より最適に行動した」と述べています。
こうした結果は、ADHDの進化上のメリットに関する最終的な答えではありませんが、現代では病気とされるこの症状が単純に悪いものではなく、状況次第ではその人を助けてくれる可能性があることを示しています。
2015年にも、米ニューヨーク、ワイル・コーネル医科大学のリチャード・フリードマン教授が、ADHDの特性は狩猟採取時代に優位に働いていたとする報告行ないましたが、今回の研究はこれを裏付ける形となったようです。
なるほどねぇ。
現在、もし、このADHDで悩んでる人がいるとしたら、こういった少し視点を変えてみると、意外な「良さ」が見つかるかもしれませんね。
ではまた〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院