2022年06月23日 [色々なこと]
クローンの価値とは…
お疲れ様です。院長です。
6月23日の木曜日でございます。
6月も残り1週間ほどとなりました。
前半はまだ梅雨とは言え、7月と聞くと夏感が出てきますね。
では今日のネタですが、研究はかなり昔から行われ、技術も進化しているであろう、クローンのお話しでもしてみようかと思います。
哺乳類として世界初の成体細胞から作成されたクローン羊「ドリー」が誕生してから26年経ちます。
これをきっかけにクローン技術の黄金時代が到来するかと思いきや、2022年現在、人間のクローンはいまだ誕生していません。
例外として、2002年にラエリアン・ムーブメントという新興宗教の信者で化学者のブリジット・ボワセリエ博士が、人間のクローン作成に成功したと主張しましたが、その証拠は提示されていません。
その理由は何なんでしょうか?
スタンフォード大学の法と遺伝子の専門家であるハンク・グリーリー教授によると、倫理的な問題だけでなく、そもそもやるだけの価値がないからなんだとか…。
「クローン」という用語は、それが幅広いプロセスや手法の説明に使われることを考えれば、かなり広い意味を持っています。
ですがどれも目的は同じで、すなわち「生物個体の遺伝的にまったく同一のコピー」を作り出すことです。
国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)によれば、人間のクローン作成の試みは「生殖クローン技術」を利用したものです。
成熟した体細胞(大抵は皮膚細胞)からDNAを取り出し、それを核を除去した卵細胞(つまりDNAを除去した卵子)に入れます。
卵細胞は女性の子宮に移植されて、体内で成長。
最終的に体細胞を提供した本人とまったく同じDNAを持つクローンが出産されるという流れです。
これまでウシ、ヤギ、ウサギ、ネコなど、多くの哺乳類のクローンが作られてきましたが、人間のものはまだ誕生していません。
その理由の一番は、やはり倫理的なものでしょう。
例えば、クローンは死亡するリスクが高いと考えられているほか、優生学的な思想の持ち主に利用される恐れもあります。
人間の尊厳・自由・平等の原則にも抵触するかもしれません。
人間のクローンの場合、さらに核心と言える問題があります。
それはヒトクローンはある人物のただのコピーなどではなく、自分自身の考えや意見を持った一個人であるということです。
例えば、一卵性双生児は遺伝的にはまったく同一で、クローンのようなものですが、2人が同じ人間とみなされることは当然なく、完全に別々の個人となります。
人間のクローンもそれと同様で、遺伝的な構成はオリジナルとまったく同じだとしても、性格やユーモアのセンスなど、それ以外の部分は同じではなくなります。
それぞれに独自の個性が芽生えてくるはずなわけです。
人間は単純にDNAの産物であるわけではありません。
遺伝物質を再現することはできても、完全に同じ暮らしの中で同じように育てることはできませんし、完全に同じ人生を歩ませることもできないでしょう。
仮に倫理的な問題がすべてクリアされたとして、はたして人間のクローンを作ることに何かメリットはあるのでしょうか?
グリーリー教授は、倫理的には許されないことと強調しながらも、遺伝的に同一な人間を作り、研究できることだと説明しています。
ただしこうした潜在的なメリットは、他の科学分野が発展したことであまり意味のないものになっているそうなんです。
例えば、2000年代初頭には、ヒトクローン胚から本人の細胞とまったく同じ胚性幹細胞を作ってはどうかと提唱されたことがあります。
しかし2006年に人工多能性幹細胞(iPS細胞)が発見されたことで、このアイデアは無意味なものになってしまいました。
京都大学の山中伸弥教授は、たった4つの遺伝的要素を使って大人のマウスの細胞を胚のような状態に戻す方法を発見し、さらにその翌年、同じことをヒト細胞でも実現し、山中教授は、この功績が評価され2012年にノーベル賞を受賞しています。
胚と同じような性質を持つiPS細胞は、人間の体内のどんな細胞にもなることができます。
ですから、クローン技術でわざわざ本人の胚を作らなくても、皮膚細胞で同じことができるわけなんですね。
こうして、人間のクローンを作成してその胚を利用するアイデアは、不必要で科学的にも劣ったものになったわけですよ。
今日、病気のモデリング、創薬、再生医療などの研究に利用されているのは、クローン胚ではなく、iPS細胞なんですね。
グリーリー教授は、ヒトクローンは、科学的に魅力的な分野ではなくなったとも指摘します。
近年ほとんど進展が見られないのは、そのためとも考えられるという。
で、今はヒトクローンなどよりもっと最先端なものが、「生殖細胞系列の遺伝子操作技術」なんだそうです。
これを利用して能力を強化した「デザイナーベイビー」の作成に強い関心を抱く科学者が多いんだとか…。
これは個人のゲノムを永遠に変更する技術で、書き換えられた遺伝子は親から子へと受け継がれます。
それゆえに賛否両論ですし、完全に理解もされていない分野と言えます。
2018年、欧州47ヶ国を代表する欧州評議会生命倫理委員会は、「人体へのあらゆるゲノム編集技術の利用は、倫理と人権に則ったものでなければならない」との声明を発表。
くわえて「ゲノム編集技術のヒト胚への応用、とりわけ将来世代に受け継がれる可能性があるヒトゲノムの改変は、数多くの倫理的・社会的・安全上の問題を提起する」と述べています。
これはダメでしょう。
これを繰り返すと、もはや人間ではない、別の生き物になってしまう可能性もあるわけで、決して超えてはいけない領域だと思います。
とか言っても、いるんですよね。
超えちゃう科学者が(笑)
ですから、デザイナーベイビーを含む、生殖細胞系列の遺伝子操作技術には厳しい法律が必要だと思いますけどね。
倫理観って、結局人それぞれな部分もありますからね。
ではまた〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院
6月23日の木曜日でございます。
6月も残り1週間ほどとなりました。
前半はまだ梅雨とは言え、7月と聞くと夏感が出てきますね。
では今日のネタですが、研究はかなり昔から行われ、技術も進化しているであろう、クローンのお話しでもしてみようかと思います。
哺乳類として世界初の成体細胞から作成されたクローン羊「ドリー」が誕生してから26年経ちます。
これをきっかけにクローン技術の黄金時代が到来するかと思いきや、2022年現在、人間のクローンはいまだ誕生していません。
例外として、2002年にラエリアン・ムーブメントという新興宗教の信者で化学者のブリジット・ボワセリエ博士が、人間のクローン作成に成功したと主張しましたが、その証拠は提示されていません。
その理由は何なんでしょうか?
スタンフォード大学の法と遺伝子の専門家であるハンク・グリーリー教授によると、倫理的な問題だけでなく、そもそもやるだけの価値がないからなんだとか…。
「クローン」という用語は、それが幅広いプロセスや手法の説明に使われることを考えれば、かなり広い意味を持っています。
ですがどれも目的は同じで、すなわち「生物個体の遺伝的にまったく同一のコピー」を作り出すことです。
国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)によれば、人間のクローン作成の試みは「生殖クローン技術」を利用したものです。
成熟した体細胞(大抵は皮膚細胞)からDNAを取り出し、それを核を除去した卵細胞(つまりDNAを除去した卵子)に入れます。
卵細胞は女性の子宮に移植されて、体内で成長。
最終的に体細胞を提供した本人とまったく同じDNAを持つクローンが出産されるという流れです。
これまでウシ、ヤギ、ウサギ、ネコなど、多くの哺乳類のクローンが作られてきましたが、人間のものはまだ誕生していません。
その理由の一番は、やはり倫理的なものでしょう。
例えば、クローンは死亡するリスクが高いと考えられているほか、優生学的な思想の持ち主に利用される恐れもあります。
人間の尊厳・自由・平等の原則にも抵触するかもしれません。
人間のクローンの場合、さらに核心と言える問題があります。
それはヒトクローンはある人物のただのコピーなどではなく、自分自身の考えや意見を持った一個人であるということです。
例えば、一卵性双生児は遺伝的にはまったく同一で、クローンのようなものですが、2人が同じ人間とみなされることは当然なく、完全に別々の個人となります。
人間のクローンもそれと同様で、遺伝的な構成はオリジナルとまったく同じだとしても、性格やユーモアのセンスなど、それ以外の部分は同じではなくなります。
それぞれに独自の個性が芽生えてくるはずなわけです。
人間は単純にDNAの産物であるわけではありません。
遺伝物質を再現することはできても、完全に同じ暮らしの中で同じように育てることはできませんし、完全に同じ人生を歩ませることもできないでしょう。
仮に倫理的な問題がすべてクリアされたとして、はたして人間のクローンを作ることに何かメリットはあるのでしょうか?
グリーリー教授は、倫理的には許されないことと強調しながらも、遺伝的に同一な人間を作り、研究できることだと説明しています。
ただしこうした潜在的なメリットは、他の科学分野が発展したことであまり意味のないものになっているそうなんです。
例えば、2000年代初頭には、ヒトクローン胚から本人の細胞とまったく同じ胚性幹細胞を作ってはどうかと提唱されたことがあります。
しかし2006年に人工多能性幹細胞(iPS細胞)が発見されたことで、このアイデアは無意味なものになってしまいました。
京都大学の山中伸弥教授は、たった4つの遺伝的要素を使って大人のマウスの細胞を胚のような状態に戻す方法を発見し、さらにその翌年、同じことをヒト細胞でも実現し、山中教授は、この功績が評価され2012年にノーベル賞を受賞しています。
胚と同じような性質を持つiPS細胞は、人間の体内のどんな細胞にもなることができます。
ですから、クローン技術でわざわざ本人の胚を作らなくても、皮膚細胞で同じことができるわけなんですね。
こうして、人間のクローンを作成してその胚を利用するアイデアは、不必要で科学的にも劣ったものになったわけですよ。
今日、病気のモデリング、創薬、再生医療などの研究に利用されているのは、クローン胚ではなく、iPS細胞なんですね。
グリーリー教授は、ヒトクローンは、科学的に魅力的な分野ではなくなったとも指摘します。
近年ほとんど進展が見られないのは、そのためとも考えられるという。
で、今はヒトクローンなどよりもっと最先端なものが、「生殖細胞系列の遺伝子操作技術」なんだそうです。
これを利用して能力を強化した「デザイナーベイビー」の作成に強い関心を抱く科学者が多いんだとか…。
これは個人のゲノムを永遠に変更する技術で、書き換えられた遺伝子は親から子へと受け継がれます。
それゆえに賛否両論ですし、完全に理解もされていない分野と言えます。
2018年、欧州47ヶ国を代表する欧州評議会生命倫理委員会は、「人体へのあらゆるゲノム編集技術の利用は、倫理と人権に則ったものでなければならない」との声明を発表。
くわえて「ゲノム編集技術のヒト胚への応用、とりわけ将来世代に受け継がれる可能性があるヒトゲノムの改変は、数多くの倫理的・社会的・安全上の問題を提起する」と述べています。
これはダメでしょう。
これを繰り返すと、もはや人間ではない、別の生き物になってしまう可能性もあるわけで、決して超えてはいけない領域だと思います。
とか言っても、いるんですよね。
超えちゃう科学者が(笑)
ですから、デザイナーベイビーを含む、生殖細胞系列の遺伝子操作技術には厳しい法律が必要だと思いますけどね。
倫理観って、結局人それぞれな部分もありますからね。
ではまた〜。
京都 中京区 円町 弘泉堂鍼灸接骨院